病気になる前に勇気を出してしかるべき対応をとりましょう。
ポイント
あなたの代わりになる労働者はいくらでもいます。でもあなたの大切な人にとってあなたに代わる存在は誰もいません。また、我慢できる閾値は人それぞれ異なり他人と比べるものではありません。自分が辛いかどうかの判断で然るべき対応を心がけましょう。
本記事の内容
- 休職とは
- 休職までの実体験
- 休職をして学んだこと
こんな方におすすめ
- 仕事が辛く抜け出したい
- 休職を視野に入れて今後の動きを検討している
本記事の信頼性
この記事を書いている私は、
- 海外MBA進学・2度の転職経験をもとに自身が所属する香港の団体でキャリア相談を実施
- SNSを通じてES・履歴書・職歴書・志望動機書に関するキャリアサポートを実施
- 国家資格キャリアコンサルタント合格(オールA評価)
- ドイツ勤務、外資系メーカーへの転職を経て、現在は外資系コンサルティングファームでビジネスコンサルタント職に従事
- 過去に1ヶ月の休職経験あり
(本ページは一部プロモーションが含まれています)
休職とは
独立行政法人 労働政策研究所・研修機構によると休職は次のように定義されています。
「休職」とは、労働者に就労させることが適切でない場合に、労働契約関係そのものは存続させながら、就労を免除または禁止することをいい、その例として、傷病休職、事故欠勤休職、起訴休職、出向休職、自己都合休職、組合専従休職などがある。
独立行政法人 労働政策研究所・研修機構
要するに、従業員が勤務先企業を長期間休むことです。
尚、従業員の休職を認めるかどうかは企業の判断であり、義務ではありません。
休職の実態
厚生労働省の調査によると、過去一年間にメンタルヘルスにより連続1ヶ月休業した労働者の割合は実に0.4%とのことです。
日本の労働人口を6,000万人とすると、約24万人が該当します。
筆者のケース(前置き)
これは数年前、実際に筆者の身に起こったお話です。
私はこれまで社会人として一つの業界(業界A)で経験を積んできました。
数年前、コンサルティングファームに転職してからも、これまで経験してきた業界Aのクライアントに対するご支援をさせていただいていました。
そんな中、自身の昇格が見え始めてきました。
昇格すると給与や裁量が増えるなどのメリットがある反面、新たな業界を経験しにくいという話を上司や周りから聞いていました。
先行きを見通すことのできないVUCAの時代、1つの業界知見だけではクライアントに対する提供価値を最大化できないと考えていた私は、何としてでも昇格前にこれまで経験したことのない業界のプロジェクトに参画したいと考えていました。
当時参画していた業界Aのプロジェクトは非常に逼迫していましたが、アカウントリードのプリンシパル(事業会社でいうところの部長〜役員)にプロジェクトを異動したいと申し出ました。
そのプリンシパルは私が入社依頼ずっと面倒を見てくださった方で、当時のプロジェクトにも私の業界Aの知見と語学力を評価してアサインしてくれていました。
私は、今後のキャリアを鑑みた際に他業界での経験が必要と考えていることを素直に彼に打ち明けました。
彼は引き留めつつも「Takaさんがそのように考えるのであれば尊重する」とおっしゃってくれました。
また、私は業界軸とは別に機能軸として、新規事業に携わりたいと考えていました。
これまで成功してきたビジネスモデルが時代の変化に対応できず企業が弱体化する姿や、新たな事業の柱を立てなければならないという危機感を抱きながらもなかなか新規ビジネスを確立できない日本企業を目にしてきました。
特に私がこれまで経験してきた業界Aでは100年に1度とも言われるドラスティックな変革が起きており、企業も生き残るために必死に新たな策を検討していました。
そのような日本の企業の力になりたい、自身が0→1を生み出すことのできるビジネスパーソンになりたいと考えていました。
そのような中でとある人から、業界Bのクライアントに対して新規事業策定を行う、戦略案件を紹介されました。
戦略案件とは、いわゆる会社の経営に直結するような、より上流でのプロジェクトを指します。
多くの方がイメージするコンサルティングの業務内容です。
これまで私が関わってきた案件は、業務プロセス改善や既存事業をピポットした新たな取り組み(広義での新規事業ではあるが、既存事業の拡張に過ぎない)であり、戦略案件ではありません。
多くのケース、戦略案件では求められる質やスピードが非戦略案件に比べて数段高いとされており、同じコンサルでも全く別の業務と言っても過言ではありません。
ある程度優秀なコンサルが必要で「Takaさんならできると期待している」とその方に言われたこともあり、このタイミングでチャレンジしない手はないと考えました。
私は「修行」と覚悟を決め、戦略案件である、新規事業のプロジェクト参画を決めました。
このようにして、自身の希望通り、「新たな業界×新たな機能(新規事業)」のプロジェクトへアサインされることになりました。
この時、妻からは、新しいことに新しいことを重ねて大丈夫なのかと心配されていました。
当時は自身の希望が叶ったことや、少なからず周りから期待されていたこともあり、やり切ることに自信を持っていました。
プロジェクト開始から異変が起こるまで
いよいよ新しいプロジェクトが始まりました。
プロジェクト体制は私の上に上司、その上にSV(スーパーバイザー)という少数部隊です。
想定通り、業務量は多く、求められる質、スピードはこれまでとは比にならないほど高いものでした。
辛い時も「自身の修行のため」と割り切り必死に食らいついて行きました。
プロジェクト開始1週間後
コンサルティングファーに転職して何年か経っていた私ですが、ここにきてコンサルのイロハを学びます。
正確には「コンサルとはこうあるべき」、「最低限これはできないとコンサルではない」といった指摘を受けます。
できていないことは指摘されて然るべき、改善して成長あるのみですので何も辛くありません。
ピラミッドストラクチャーやグラフの見せ方、身の振る舞い、仕事の進め方など指導いただきました。
SV(スーパーバイザー)がマッキンゼーやBCGといった戦略ファーム出身であったこともあり、私としても学ぶことが多く非常に充実していました。
「筋は悪くない、このプロジェクトを通じて成長していこう」と励ましをいただき、私としてもその期待に応えたいと真剣に思っていました。
プロジェクト開始2週間後
プロジェクトが本格指導し、作業ボリュームが一気に増えました。
業務は23時を回ることも珍しくなく、お昼休憩もろくに取らずに、ディスカッションや資料作成に明け暮れていました。
やっとのことでタスクをこなしても新たなタスクが控えており、終わりのないマラソンをハイペースで走っている感覚です。
ただし当時の私は全ては自分の成長につながると信じ、辛さをあまり感じていませんでした。
業務量もさることながら、業界知見のキャッチアップにも苦労していました。
これまで全く経験のない業界でしたので、プロジェクトメンバーやクライアントが話している内容がわからないケースがありました。
社会人になって久々に「業界Bがよくわかる本」を購入し、業界Bに関する基礎知識から身につけて行きました。
また新規事業策定というミッション上、最新テクノロジーや社会的なメガトレンド、ベンチャー企業への投資額など、自身にインプットしなければならない情報がたくさんありました。
プロジェクトメンバーは皆、戦略案件を経験しておりこの辺りの知見は豊富でした。
ある時、情報のキャッチアップが追いつかず、またメンバーの会話についていくのが必死で、会議で発言できない会がありました。
「Takaさん、発言しないなら居る意味ないよ」と言われました。
その時はネガティブな感情はなく、「お、コンサルに転職する前に想像していたフレーズだ」とワクワクさえしていました。
新業界、新案件ということで、人よりもキャッチアップに時間がかかった私は、終業後や休みの日も本を読んだり調べものをしたり、資料を作成したりしていました。
プロジェクト開始4週間後
毎週記憶がないほどものすごいスピードで時間が経って行きました。
私の上司は睡眠時間3時間がデフォルトでかなりタフでした。
今考えるとこれも少なからずプレッシャーに感じていたのだと思います。
私はロングスリーパーなので睡眠が長期間削られるとパフォーマンスが落ちます。
さらに、昇格が見えていた私は彼のシャドウウィングをしたいと考えており、彼のパフォーマンスを他人事として割り切って考えることができていませんでした。
来年、ひょっとすると年内には昇格して上司と同じ活躍を期待されるのかもしれないという恐怖と焦りが自分を追い込んでいきました。
プロジェクト開始6週間後
ついに上司がコロナにかかり稼働が落ちました。
とはいえ、その上司はコロナの中でも休むことなく働きます。
クライアントミーティングを翌日に控えたある日、資料作成がいつものように23時を超え始めました。
23時頃、まだ資料が完成していなかったこともあり、SVから指摘が入ります。
フルリモートで活動している関係上、指摘はパワポ上にワッペンが貼られるのです。
直接的な会話ではなく、文字だけで見ると多少きつい言い方に取れなくもなく、これまで騙し騙し前向きに取り組んできた私も流石にこたえました。
指摘を直しては指摘を受け、の繰り返し。
指摘は1時過ぎまで続き、結局その日2時ごろまで作業をしていました。
2ヶ月ちょっと、日を跨いで作業する日が継続し、ふと、「自分は何のために働いているのだろう」「何に必死にしがみついているのだろう」と考えるようになりました。
その日はなかなか眠ることができず、思わず前のプロジェクトでお世話になったSVに「自信が持てない」と連絡をしてしまったほどです。
翌朝、前プロジェクトでお世話になったSVから返事があり、「Takaさんを信頼している仲間はたくさんいる、体調が1番なので立ち止まる決断も時には大事」と言ってくれました。
なぜかその時涙が出ました。
これまで、深夜作業をするのは全部自分のせい。
自分の能力が足りないから。
自分の努力が足りないから。
そうやって自分を責め続けてきた2ヶ月。
そんな自分でも評価して心配してくれる人もいるのだとホッとしたのだと思います。
その言葉のおかげで再び頑張ろうと思うことができました。
プロジェクト開始8週間後
長期休暇まで後1週間。
それだけを頼りに追い込みました。
毎日の残業は6、7時間。
当時の私は感覚がおかしくなっており、深夜残業への抵抗は全くなくなっていました。
プロジェクト開始10週間後
長期休暇でリフレッシュすればまた頑張れる。
...でもそれは錯覚だったようです。
PCに向かうと頭痛や吐き気が。
会議でも発言が減り、パワポを開いても頭が働かない状態になりました。
目の前がチカチカする飛蚊症も発症していました。
次第に朝起きることもできなくなり、その日は午前中お休みすることに。
そういえば食欲も満腹感も感じないようになっていました。
その時、やっと何かがおかしいと思い人事に相談しました。
休職までの流れ
人事に相談するとカウンセラーと産業医にコンタクトをすることを推奨されました。
私の会社ではプロジェクトの上司とは別に私のキャリア全般を見てくれるカウンセラーと呼ばれる人がいます。
カウンセラーといっても産業カウンセラーなどとは違い、普段は私と同じようにプロジェクトでバリバリ活躍している人です。
カウンセラーとは直接的な利害関係がないので、フラットに私のことを考えて意見をくれるありがたい存在です。
稀にプロジェクト上司とカウンセラーが同じになるケースもあります。
カウンセラーに相談するとすぐに面談をセッティングしてくれました。
状況を説明すると、休職することを打診されました。
業界の特性なのか企業の特性なのか分かりませんが、休職すること自体は珍しくなく、多くの方が復職し活躍されていることを話してくれました。
心が病んでしまった人に対する救済措置があり、それがすぐに使えることは本当にありがたいと思いました。
これまで自分ができないから仕事が終わらないと、自分を責め続けてきた私にとってはとても心が救われました。
1つ驚いたことがあります。
それはプロジェクトのSVが私のことを褒めていたということです。
実は私がカウンセラーに相談した前日、カウンセラーとプロジェクトのSVが別件で話すことがあり、私のことについて会話したそうです。
カウンセラーによるとそのSVは私のことを逸材だとまでいってくれていたようで、それを聞いた私は人というのは何を考えているのかわからないなと思いました。
確かにプロジェクトのSVと1体1で会話する時には、「筋は良い」「成長している」「昇格もできなくはない」など、言ってくれてはいました。
ただ日頃の業務では指摘が多く、時にはキツく指導いただいていたので、私としては全く評価されているとは感じていませんでした。
とはいえ、もうプロジェクトに戻ることは恐怖さえ感じていたので、カウンセラーのアドバイスに従い、休職する方向で調整することにしました。
産業医面談は残念ながら直近の枠が埋まっており、最も早くて5日後を打診されました。
産業医面談を必要としている私のような人間が何人もいるのかと思うと複雑な気持ちになりました。
今回の経験から得た学び
自信や健康などを一時的に失いましたが、得た学びもあります。
人は思いの外弱い
これまで様々なことに前向きに取り組み挑戦してきた私がまさか休職になるとは思ってもいませんでした。
なんなら直前まで知人の休職相談・転職相談に乗ってアドバイスしていたほどです。
でも人はある閾値を超えるとリミッターが働き自分を守るために悲鳴を上げます。
私の閾値は3ヶ月24時以降まで働き続けることでした。
人によってはもっと過酷な環境で働いている人、働いていた人がいるかもしれません。
または3ヶ月とは言わずとも1ヶ月苦しい勤務をしている人もいる、いたかもしれません。
ここで重要なのは、閾値は人それぞれで他人と比べるものではないということです。
人それぞれキャパや受けるダメージは異なるので、私のように「上司は3時間しか寝てないんだから私は根を上げてはいけない」などと思ってはいけないのです。
自分が潰れる前に自分の声にきちんと耳を傾けましょう。
できるとされている人ほど潰れてしまう
これはカウンセリーに言われたことなのですが、できない人はできないと言えるし上も任せないので、プロジェクトの負荷が高くてもうまく乗り切ることができる可能性が高い。
一方でできるとされている人ほど上からタスクが投げられるし、本人も自分でできると思い仕事を抱え込みがち。
そうするとキャパが溢れて結果的に潰れてしまうそうです。
私の場合は常に自信がなかったのでこれには当てはまりませんが、少なくともプロジェクトのSVは評価してくれていたようなのでタスクの投げられ方は荒かったのかもしれません。
今後は、できないことは抱え込まずに、できないことを認識にその上で自分は何ができるのか、できるためにはどのようなサポートが必要なのかを打ち上げることができるようにしたいです。
自分だけではなく家族を巻き込む
仕事で身体面、精神面の状態が良くないと家族がとても心配し、結果的に大切な人を悲しませることになります。
私も妻が常に心配していましたし、両親も状況を伺ってきました。
本当に申し訳ないことをしました。
幸いにも私の妻もバリバリのキャリアウーマンで私と似たような経験があります。
彼女のアドバイスのおかげで勇気を持って人事に連絡することができました。
体調に異変が出たタイミングで人事に連絡を取れていなかったら、無理をしながら仕事をしパフォームできないから指摘を受け、また病み…という負のサイクルに巻き込まれていたと思います。
家族のためにも、周りの意見もきちんと受け入れながら、取り返しがつかなくなる前に判断することも大切です。
自分が抜けても仕事は回る
プロジェクトに自分が参画している時は、自分が抜けたら周りやクライアントに迷惑がかかる。
プロフェッショナルとして途中で抜けるなんてありえない。
などと考えがちです。
私もそうでした。
特に責任感の強い人だとこの傾向が強く、辛い状況でもなかなか声を上げることができないと思います。
でも休職してみて、私が一人抜けてもなんとかなることがわかりました。
もちろん周りには迷惑をかけているので申し訳ない気持ちになるのですが、仕事は組織で動かしているのでやりようはいくらでもあるのです。
もし今、辛い状況に身を置きながら、周りを気にして声を上げられず、体を壊してしまいそうな方がいたら、迷わずドロップして良いと思います。
人が抜けることでプロジェクトの負荷は一時的に上がりますが、代替はききますし、偉い人がなんとかしてくれます。
でも誰かが精神的に壊れてしまった後に、会社や偉い人はその人を救うことはできません。
この世には、あなたの代わりはいないからです。
仕事をする代わりはいますが、あなたの大切な人にとってのあなたの代わりは誰もできません。
意外にも休職者は一定数周りにいる
休職してみて分かったのですが、実はバリバリ活躍している人も昔休職していた、休職していたけど今ではここまで昇進しているなど、普段では想像もつかない人が休職していたようです。
休職をしたら復帰できないのではないか。
休職したら戦力外と見做されるのではないか。
その不安、分かります。
でも活躍している人ほど苦労していたり、それを乗り越えてきた経験があるものです。
なにも休職は悪いことではありません。
休職することで気がつく自分の姿や、将来の目標、自分にとって大切な価値、周りのありがたみなど、普段の日常では忘れがちなことを発見できたりもします。
きちんとお休みすることを第一にしつつ、休職をチャンスと捉え、プラスな行動を起こす際のエネルギーとしましょう。
まとめ:最後に自分を守ることができるのは自分だけ
様々な理由で休職に至ることがあると思います。
でも休職することも一つの立派な判断であり、長い人生において貴重な経験と考えることもできます。
私もこの経験を生かして人の痛みや弱みがより理解できるようになりました。
マネージャーなど人の上に立つ上で非常に重要な要素です。
期待されている人ほど、責任感の強い人ほど無理をしがちです。
でも誰もあなたが潰れることなんて望んでいません。
一時的な負荷であればやむを得ないかもしれませんが、慢性的な負荷が加わり「自分、無理してるな」と感じる時は、ぜひ自分の声に向き合ってください。
そして、勇気を持って必要な対処を周りに求めてください。
そのようにすることであなただけではなく、あなたの周りの大切な人が救われます。
今回の休職という貴重な体験を経て、私もより人の心に寄り添うことのできるキャリアコンサルタントとして活動していきたいと思います。
キャリアに関してお悩みのことがあれば、お気軽にご相談ください。
全力でサポートさせていただきます。